指揮者で音は変わるのか?指揮者の違い

よく「指揮者でオーケストラの音は変わるのか」と聞かれる事がありますが、それは、当然変わります!

室内楽を4人で演奏するなら呼吸が合います。しかしオーケストラは60人くらいで演奏するので、なかなか指揮者なしではタイミングが合いません。昔は杖のようなもので床をドンドン叩きながら指揮していました。棒が足を突き抜けて、そこからの細菌感染で死んでしまった指揮者もいたそうです。やはり床を叩くのはうるさくて音楽的ではないし、死ぬかもしれない、っていう事で今の空を切る指揮になりました。指揮者は空中の打点を叩くことで、拍を明示します。床は叩かないですが、確かに叩いているのです。

そして、どうやって振るのか、で音が変わります。優しく慈しむように振るのか、元気よく明るい表情で振るのか、で音色(おんしょく)が変わります。基本的にはフォルテでは力強く、ピアノでは優しく振る訳です。しかし同じフォルテでも、力強い中にも繊細さがあるのか、あるいは怒りに満ちた力強さなのか、とオーケストラプレイヤーに分かるように振る必要があります。

ただリズムだけ振る指揮者は存在する意味がないのです。いかに素晴らしい音楽をしたいか、それをオーケストラプレイヤーに分からせるのが指揮者の第一の仕事です。

カラヤン、フルトヴェングラーのような伝説的な指揮者は、指揮棒が下りた瞬間に空気が変わります。読売日響の桂冠名誉指揮者のスクロヴァチェフスキ氏の指揮では、予備拍が上にあがった瞬間に、彼の口の中に吸い込まれそうになる感覚を覚えました。体はご老体で多少手が震えていても、プレイヤーに伝わってくる音楽が圧倒的で、それだけ引き込まれてしまうのです。私はスクロヴァチェフスキ氏の指揮が一番疲れます。他の団員も同じようで、「スクロヴァは我々の元気を吸って帰っていく」と恐れられています!!

大きく元気よく振るから良い指揮者、というわけでもないのが指揮者の面白いところです。

2013414日にイギリス人指揮者のコリン・テイヴィス氏がお亡くなりになりました。ロンドン交響楽団をはじめとして、世界中で活躍されていました。偉大なる指揮者のご冥福を心よりお祈りいたします。

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