オーケストラ・スタディ
ようやく右肩の痛みも和らいできました。炎症止めや筋弛緩剤の注射を打ったり、鍼に行ったり、ソフト整体に行ったり色んなことを試しました。今の所は、ブロック注射が一番効いているのかな、と思います。
今日は生徒さんがオーケストラスタディを持ってきました。シュトラウスのドンファン、シューマン2番交響曲2楽章、ベートヴェン9番交響曲2楽章、など。
ヴァイオリンで手に職を持とうと思ったら、オーケストラに所属するのが思い浮かびます。しかし、ヴァイオリンやフルートといった花形の楽器は人口も多く、競争も激しいです。もっともフルートが一楽団あたりせいぜい4席しかないのに比べれば、20,30席あるヴァイオリンの方がはるかに恵まれているかもしれません。席が空かないと募集はかからないので、その点、ヴァイオリンの方が募集がかかりやすいです(回転率がいいという事です)。ちなみにヴァイオリンだと1回につき100人弱の応募があります。
チューバなんかは一楽団に1席しかない所に50人近くの人が殺到してきます。チューバは一度、席が埋まると、日本中を見渡しても10年は空かないなどといわれます。チューバ奏者のオーディションは本当に命がけだといえます。
オーケストラの審査では、ソロ曲、オーケストラスタディ、と審査するのが一般的、というかほぼ全てのオーディションがそうだと思います。ヴァイオリンのソロ曲審査ではヴァイオリン協奏曲をやります。普段の演奏会でも、チャイコフスキー、ブラームス、メンデルスゾーン、シベリウスなどのヴァイオリン協奏曲はよく演奏されるので、それなりに実力が分かるかと思います。
しかし、オーケストラで大事なのは、やはりオーケストラスタディです。アンサンブルをする能力がどのくらいあるか、今までオーケストラに真剣に向き合ってきたか、などあらゆる要素が問われます。
例えば私のようなヴァイオリン奏者がトランペット協奏曲を聞いて、その人のレベルが分からなくても、トランペットのオーケストラスタディを聞けばどういう奏者なのか、かなり分かります。呼吸の取り方、フレーズの感じ方、フレーズの表現力、休符の感じ方、などなど。音色が美しいのも当然利点になりますが、音楽的な総合力が問われます。
私は休符の感じ方が意外にキモなのではないかと思います。オーケストラスタディは1人で演奏しますが、オーケストラ全体があたかも聞こえてくるような演奏をしなければいけません。審査側はオーケストラ全体の音楽を感じながら聞いているので、まだ休符だと思っているところで音が出てくると違和感やストレスを感じます。他のパートを無視して、一人で先に行ってしまうような印象を受けてしまうのです。※これはあくまでも個人的な感想です。効果には個人差があります。
つまり自分のパート譜を見ているだけでは残念ながら全く駄目で、メロディーやバス、リズム打ちなどあらゆる要素を感じながら弾かなければ意味がないのです。音を間違えずに弾くのは当たり前で、その先のプラスアルファが必要なのです。それが、スコアの理解力(を感じさせる演奏)であったり、フレーズを理解した上での表現であったりします。フレーズにしても、オーケストラ曲はパート譜だけを見ていると、フレーズを正しく把握できないことが往々にしてよくあります。普段から(ヴァイオリン協奏曲などでも)スコアを読むクセがついていないと中々苦労するかもしれません。
色々な要素を感じながら弾くというのは説明が難しいのですが、CDを聞きまくるのも効果があります。
私はオーディション前は一晩中オーケストラスタディの曲の出題部分を流していました。高校の期末テスト前の詰め込みを思い出しました(^^)/高校の期末テストは全然出来ませんでしたが、音源垂れ流しは効果がありました!
プレッシャーで睡眠が浅くなるし、何よりうるさいのですぐやめましたが、オーケストラを暗譜で頭の中で流せる状態を作らなければなりません。音源を聞きながら更にスコアを見ると、頭の中で整理され、曲の構造がはっきり見えてきます。
最低ここまでの段階までに達してからでないと、オーディションを受ける意味があまりないと思います。しかしこの段階までくれば、もうあとは少し演奏を整えるなりすれば良いです。そして自分なりの表現力で曲を創り上げていきます。
オーケストラのオーディションは運もあります。当日に体調が悪くなるかもしれない、緊張して思いっきり音程を外してしまうかもしれない、審査員に嫌われていて上手に演奏しても落とされるかもしれない、などなど。実際に、上手な人が2人いたりすると、票が割れてどちらも不採用になる事もあります。
しかし、まずはオーケストラにおける基礎力を高め、試験に臨むのが良いと思います。
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